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#001African Americans|アフリカ系アメリカ人

アフリカ系アメリカ人は、1世紀以上にわたって社会学の幅広い研究の焦点となってきました。このグループに関する研究は、人種と民族関係、都市社会学アイデンティティ社会学などの社会学の下位分野のテーマの中心となってきました。
写真:ハーバード大学の研究拠点 ハッチンス・センター

アフリカ系アメリカ人研究の起源と発展

アフリカ系アメリカ人研究は、アフリカ系アメリカ人の歴史、文化、社会、政治などを学際的に探求する学問分野です。その起源は、19世紀後半の南部再建時代にさかのぼります。 当時、奴隷制廃止後の混乱期にあったアメリカ南部で、アフリカ系アメリカ人の権利回復と社会的地位向上が大きな課題となっていました。

20世紀に入ると、1960年代の公民権運動を契機に、アフリカ系アメリカ人研究は大きな発展を遂げます。 公民権運動の指導者であったマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師らの活動により、アフリカ系アメリカ人の平和的な解放運動が全米に広がりました。 これを背景に、アフリカ系アメリカ人の歴史や文化に対する関心が高まり、各地の大学でアフリカ系アメリカ人研究のプログラムが設置されるようになりました。

https://youtu.be/SmdCSPvxyHM

動画:Northwestern Univ. Department of African American Studies

現在、アフリカ系アメリカ人研究は、歴史学社会学、人類学、文学、言語学など多様な分野にまたがる学際的な研究領域として発展しています。 例えば、ハーバード大学のアフリカ・アフリカ系アメリカ人研究機関、ハッチンズセンターでは、アフリカ系アメリカ人英語の包括的な辞書の編纂プロジェクトが進められています。
※ Oxford Dictionary of African American English (ODAAE) 2025年刊行

https://youtu.be/_A89Of-k0Ng

https://hutchinscenter.fas.harvard.edu/odaae

こうした取り組みを通じて、アフリカ系アメリカ人が英語の発展に果たした貢献が明らかにされつつあります。アフリカ系アメリカ人研究は、アメリカ社会におけるアフリカ系の人々の経験を多角的に理解するための重要な学問分野として、今後もさらなる発展が期待されています。

https://hutchinscenter.fas.harvard.edu/annual-reports

👉Hutchins Centerとは:
1975年にW. E. B. Du Bois Research Instituteとして設立され、2013年に現在の名称に改称されました。このセンターは、アフリカ系およびアフリカ系アメリカ人の歴史と文化に関する学術研究の中心です。
※Hutchinsは、ハーバード大学出身のエクイティファンド創設者


社会学者は、アフリカ系アメリカ人が北米南部から北東部および中西部の都市を拠点とするコミュニティへの移動(20世紀初頭から半ばにかけての大移動)をどのように、そしてなぜ経験したかを調査してきました。

Alba, Richard, and Victor Nee. 2005. Remaking the American mainstream: Assimilation and contemporary immigration. Cambridge, MA: Harvard Univ. Press.
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1965 年以降に米国に移住した有色人種の人々の定着プロセスについて調査しています。その目的は、到着の数世代以内に、特定のグループのメンバーが人種的または文化的にアフリカ系アメリカ人と同一視されるようになった経緯と理由を理解するためです。

Tolnay, Stewart E. 2003. The African American “Great Migration” and beyond. Annual Review of Sociology 29:209–232.

DOI: 10.1146/annurev.soc.29.010202.100009
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この総説論文は、アフリカ系アメリカ人が大移動をどのように経験したかを調査した社会学文献をレビューしています。これは、産業の近代化に伴う社会経済的変革がアフリカ系アメリカ人を北部および中西部の都市部に追いやった一方で、ジム・クロウ南部の社会政治的抑圧がアフリカ系アメリカ人をその地域から追い出したと主張する研究があります。

一連の研究は 1950 年代後半から 1960 年代にかけてどのように社会抗議運動に参加し、20 世紀半ば以降アメリカの都市で広がった貧困と絶望を経験し、立ち向かってきたかを明らかにしました。また、アフリカ系アメリカ人の社会的アイデンティティについて、そのアイデンティティが20世紀半ば以降変化してきたこと、多人種性、ジェンダーセクシャリティ性的指向)、アイデンティティの知的、政治的変化に影響を与えつつ、影響を受けてきたことを研究してきました。


アフリカ系アメリカ人の経済的成功と課題

アフリカ系アメリカ人は、奴隷制や人種差別の歴史を乗り越え、様々な分野で活躍しています。例えば、アレサ・フランクリン (1942 – 2018)などの音楽家は、アフリカ系のルーツを持ちながら世界的な成功を収めています。 また、黒人コミュニティの中には、地域に新しい経済循環をもたらすことに成功した事例もあります。 しかし一方で、アフリカ系アメリカ人の多くは今なお経済的な格差に直面しており、差別の存在は無視できません。 歴史的・文化的に複雑な背景を持つアフリカ系アメリカ人の社会的地位向上は、アメリカ社会を理解する重要なキーワードといえます。

Nielsen 2015