写真:バッキンガムシャーのキャンパス(東京ドーム10個分)Google maps
英国のオープン大学 (Open University: OU) は、柔軟な入学要件と世界中からアクセスしやすい遠隔教育プログラムで知られる著名な通信制大学です。 1969 年に設立され、学生数で英国最大の大学に成長し、世界中のどこからでも学べる幅広いコースを提供しています。
※在学生数は208,308 人 、 25 歳未満が34%。8,599 人が留学生(91か国)
無試験・無資格のアドミッション・ポリシー
OUは、開かれたアドミッション政策で有名です。これは、入学要件が最小限であるかまったくないことを意味し、正式な学位資格を持たない人を含む、より幅広い学習者に対して高等教育の機会が開かれていることを意味します。 1964年の総選挙に勝利したハロルド・ウイルソン労働党政権の教育政策(ロビンス委員会報告)の成果の一つでもありました。※ 1960年代の大学進学率は6から7%でした。
教育システム|チューターの存在が大
専任教員は1427人、非常勤が約5000人。350の学習センターがあります。特徴は授業を補助するチューター(Associate Lecturer)が2000人もいることです。チャットや電話、オンラインで個別相談ができます。学生がフルタイムで働きながら学習できるようにする、OU の独自のオープンサポート型学習スタイルです。
OUの基礎コースでは、1週間の寄宿型サマーコースの対面授業が必須となっています。英国内だけでなく世界各地で開催されています。
大学は遠隔教育に合わせたさまざまな教授法を採用しています。 これらには、テキスト教材、音声および視覚補助資料、👉講義のテレビ放送は、2006年に終了しました。現在の主力はインターネットのeラーニングです。
評価法用は、コースワークと試験を同等に評価します。6択の選択問題や穴埋め問題のほかに、レポート試験は3時間の時間制限で最大3つ課せられます。
※放送大学でありがちな、授業の感想を書いてくださいというのはありません。
※ 懐かしいテレビ放送授業の一部はBBC2「ラーニングゾーン」で受講できる。
コースとカリキュラム
オープンユニバーシティは、学部の証明書や卒業証書から学士号や修士号まで、幅広い資格を提供しています。 学部は下図の系統(ライン)に分類され、それぞれ4つのレベルに分かれています。OU人気の 1 つはオープン学位です。 このプログラムでは、学生がさまざまな下記の科目から選択して個人的、職業上のニーズに合わせて学士(オープン)を取得できます。
1コースが15・30・60ポイントの科目群からなっています。後述の1CATS(ポイント)は10時間分の学習時間です。モジュール単位で週16時間の学習を9カ月行います。
英国の多くの大学は、3年間の学びの最終試験の結果を判定し、学位が認定される「最終試験方式」を取っています。これは仕事で学びが中断したりする勤労学生には厳しい制度でした。そのため、米国やスコットランドで一般的だったコース制と単位制を導入しました。OUでは、基礎モジュール2単位、レベル2以上のモジュール4単位の合計モジュール6単位で学位が授与されます。※ 普通の履修ペースだと卒業まで6年かかります。
こうした画期的なカリキュラムは全国学生調査で英国大学トップの満足度となっています。
優れた教育システム | 講義教材・試験問題はチームで
OU教員だけでなく、プロジェクトマネージャーがおり、学習テクノロジスト、プログラマー、デザイナー、編集者からなるコースプロダクションチームが講義教材をチームで制作します。製作期間は1年半から2年です。
※ 日本の大学からすると夢のような制作過程ですね。
講義中はチューターが学生15人ごとに責任を持ち、質疑応答や課題の添削を行います。中間課題ではチューターの添削指導があります。期末試験は全国の学習センターで行われますが、試験問題はコースチームが作成し、添削課題と期末試験の合計で評価します。
CATSとECTS|単位モジュールが英国内だけでなくEU諸国間で相互認定
オープン ユニバーシティは英国で完全に認定されており、世界的に認知されており、その資格が世界中で評価されています。英国の単位モジュールである、1CATSポイントは 想定学習10時間の学習成果に相当します。学士号には300 (優等の場合は 360) CATS が必要です。OU では、文学士 (BA)、科学 (BSc)、法律 (LLB)、工学 (BEng) の学位が授与されます。
一つのコースで 120 単位(1200時間)を完了後に授与される修了証書(略称サート)、 240 単位後にディプロマ(略称ディップ) を授与します。
※ 多くの職業でこのディプロマの提出が求められます。
OU大学は、 大学院教育としてMBAとMPA、MSc、MAとMEd、およびMResなどの幅広い修士レベルのモジュールと、遠隔授業での博士課程を提供しています。
※学位の質保証として枢密院に任命された他大学専門家を中心としたOU大学諮問委員会が助言を行い、学外試験委員が試験問題の内容や採点基準を決定する権限を持っている。
また、OU大学は、米国で単位認定されている数少ない英国の大学の 1 つであり、国際的な研究大学の一つでもあります。
ただし、授業料は卒業までの学費が70万円ほどの日本の放送大学に比べると高額です。これは2012年の英国政府の高等教育改革のため、大学学費を5倍に値上げしたためです。OU大学の学費ですが「1年間の科目・専門コース・120モジュールクレジット(単位)が£6,336(122万円)」。 「4年間の合計費用£19,008(367万円)」です。これでも英国内で最も低い学費です。
※ ロンドン大学だと、年間260万円から360万円です。
要約すると、オープン ユニバーシティはオープンアクセス教育への取り組みと柔軟性で世界的に際立っており、さまざまな背景を持つ学生が幅広い自由なプログラムやコースを通じて教育とキャリアの見通しを高めることができます。
eラーニングはモバイル端末対応、教材はiTunesからダウンロードするなど、遠隔教育に対する革新的なアプローチとチューター制の包括的なサポート システムにより、世界的にも最先端の通信制大学となっています。
https://www.youtube.com/user/TheOpenUniversity
注目! OpenLearn| 大学の壁を越えた「学びと教えのコミュニティー」
https://www.open.edu/openlearn/free-courses/full-catalogue
OpenLearnは、2006年に学習者がOpen Universityの教材に無料でアクセスできるように、BBCと共同で設立されました。
現在、OpenLearnでは、1000講座におよぶ「芸術と歴史」「ビジネスと経営」「教育」「健康とライフスタイル」「ITとコンピュータ利用」「法律」「数学と統計」「現代言語」「科学と自然」「社会」「学習方法」「テクノロジー」の12のコースを提供しています。世界中から89万人が学ぶMOOCは、大学発のeラーニングの分野では他に類をみない画期的な試みです。
特筆すべき点は、これらの学習コミュニティーには、正規の学生や卒業生、教職員だけではなく、学外から世界100か国もの学習者と教員が加わっていることです。JMOOCや公開講座など「大学の壁」によって遮られ囲い込まれている日本の高等教育の超えられない壁との大きな相違点です。
オープンユニバーシティは、入学者にいかなる教育資格も求めないというオープンエントリーの原則と日本の地方帝大と同水準の学問的卓越性を両立できている稀有な存在です。
👉私たちが目指す「リベラルアーツの学校」のモデルの一つが、オープンユニバーシティであり、特にこのOpenLearnです。学習者がほかの受講者との学びの協働が可能な「 LearningSpace」は、大学の壁を越えた「学びと教えのコミュニティー」の可能性を示しています。