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#02 書店と学術出版のエコシステム|文化政策から出版・書店業をみてみた

写真:神保町古書店街 千代田区観光協会 2024

書店の経営環境

書店の経営環境については、国内外の書店の経営環境に関する調査から、日本の書店は主に委託販売の問題点が指摘され、また、オンライン書店の増加とともに地方での書店の消滅が報告されています。このような状況の中で、学術書の重要な流通経路だった古書店は多角的な経営や学術書イベントの開催を通じて、顧客との関係を深め、生き残りを図っています。
※2020年時点での書店数は12,581店となっています。

https://jpo.or.jp/


文化政策としての図書の定価販売

経済産業省 コンテンツ産業課 2023
朝日新聞デジタル 2013年3月19日

新刊書の販売価格規制(エイジェンシーモデル)がある国として日本・韓国・ドイツ・フランスとあるが、日本は電子書籍については適用を除外し、また定価販売も義務付けていなかった点に気が付きました。日本のAmazon電子書籍の現状(廉売)をみると、ドイツ・フランス・韓国の出版をめぐる文化政策に興味を持ちました。

出版物の流通と取引形態

  • 日本・フランス・韓国は、取次(トーハン、日販など)経由は主流であり、そのほかは書店と出版社の直接取引

  • 欧米は条件付き返品許容の注文買い切り。韓国と日本は委託販売。

  • 日本以外では、書籍、雑誌など事業者が複数あるが日本は大手取次(トーハン等)がすべてを掌握

👉出版の流通を担う「取次」:日本には総合取次と呼ばれる日本出版販売、トーハン大阪屋栗田といった取次会社が存在し書籍と雑誌を両方流通させる。

各国の書店と出版業

  • 米国:流通経路が多様、独立書店は地域密着

    • 出版産業は、一時減少したが、近年は微増傾向。

    • 書店数は減少傾向が続く。大手書店(Barnes&Noble)と独立書店(地域密着)。Amazon売れ筋の本を値引き販売。

独立書店 NY Greenlight Bookstore公式
  • ドイツ:大手取次(リブリ社)が小規模書店に配送インフラを提供

    • 出版市場は微増傾向。書店数は2020年に4000点を下回る。

    • 出版社が年2回、直接カタログ販売。書店とは直接取引。流通取次が中小書店に流通システムを提供し、書店で注文すると翌日配送(小規模書店でも返品率6%未満)。

    • 👉「ドイツモデル」と呼ばれる書店経由の通販。電子書籍販売も取次が中小書店をサポートする。

  • フランス:創作と出版の多様性の維持

    • 独立書店を保護する定価販売法(ラング法)、オンライン書店の送料無料を禁止する(反Amazon法 2012年)

https://www.afpbb.com/articles/-/3018948

  • 韓国:紙・電子とも図書定価制

    • 2007年、出版文化産業振興法を制定し、電子書籍も含め、発行後1年間の定価維持。割引も最大15%。

まとめ:

  • 👉日本と欧米諸国等の違いは、取次・書店とも売り上げの主流が雑誌である点。書店に新刊雑誌がならぶのは日本だけ。欧米の出版取次は書籍専門。

  • 👉日本では雑誌流通が書籍流通を支える構造により、書店に1冊から届ける流通体制が維持され流通費用を低く抑えることで、書籍の価格が諸外国より極めて安い。

  • 👉日本の書店の衰退は雑誌の衰退のため。雑誌の収益に頼ってきた総合取次と雑誌販売だのみ書店は、最盛期の三分の一にまで縮小した雑誌販売に対応できなかった。

古書店の市場規模と地方の売上動向

日本の古書店市場は、新古書を含む中古本市場として、2018年度には713億円の市場規模を持っていましたが、これは2014年度から18.7%の減少を示しています。このデータは、新刊書店だけでなく古書店の市場も縮小している現状を示しています。

人口あたりの書店数と坪数 全国10位まで 出版流通学院 2019

古書店と学術出版の関係

古書店学術書の流通において重要な役割を果たしています。多くの古書店は、学術書を含む専門書を主要な商品として扱っており、特に絶版本や専門的な学術書古書店で取り扱われることが多いです。また、大学出版部との連携を通じて、学術出版の活性化を図る動きも見られます。例えば、大学出版部協会は、学術書の出版を通じて知識の流通を促進しており、古書店側は学術出版との関係を深めることで生き残りを図っています。学術書の流通と古書店の役割が相互に補完し合う形が学術図書が流通し、古書店が存続していく方策のようです。

古書店は新刊書店とは違う?若い世代が参入しやすい?

けやき書店店主 佐古田さんは、古書店は新刊書店のように激減することはないという。都内にある3つの古書会館は、組合員対象の交換会(市)の場だ。そこでは若者の姿が目立つようになったという。

「昔は古物商許可証の取得には実店舗が必要でしたが、今はネット受注だけでも商売ができるので、若い人たちが参入しやすい。組合が時折開催する古本屋開業講座は、いつも満席になります。古本の専門知識は必要ですが、ネットでも学べる時代ですし、意欲さえあれば次第に身に付くはずです」

日本の古本屋今昔物語  nippon.com 2024

https://jimbou.info/

https://jimbou.info/bookstores/


結論

日本の新刊書店は、市場規模の縮小とともに厳しい経営環境に直面しています。一方、古書店学術書を含む専門書の流通において依然として重要な役割を担っています。近年、古書のネット販売が一般化し、若者の参入も増えて古書店業はむしろ活況化しています。神保町の古書店街も学術出版との連携を深めることで、知識の保存と流通に貢献しており、これからもその役割は変わらないと考えられます。文化政策として出版業や書店業をみる必要がありそうです。日本の特徴である古書店と学術出版の相互作用は、日本の知的文化の発展に寄与していくでしょう。

古書店へ出かけましょう!

https://visit-chiyoda.tokyo/app/spot/detail/50

https://note.com/libart_institute/n/nc6234d73c235