現状と課題|『平成29年度 認証評価報告書』(学位授与機構 2017年)から
放送大学の認証評価は付帯意見はありますが、もちろん合格です。
私が思ったより放送大学は大規模な組織でした。教学制度がよく整備されています。でもここに勤務すると考えると、いろいろとたいへんかもと感じました。
※ 大学認証評価制度: 大学の教育・研究の質を保証するために設けられています。文部科学大臣が認証する評価機関が、7年ごとに大学を評価し、その結果を公表します。主な認証評価機関には、公益財団法人日本高等教育評価機構や大学基準協会などがあります
現状:
放送授業、面接授業、オンライン授業の3つの形態で授業を実施し、いつでもどこでも学べる環境を確保している
基盤科目とコース科目に分け、コース科目は導入科目、専門科目、総合科目に区分し、順次専門性の高い科目を配置して体系性を確保している
平成28年度は284科目の放送授業、3,213科目の面接授業、8科目のオンライン授業を開講 👉オンライン授業はまだ途上です。
社会のニーズに対応し、平成25年度に「情報コース」を新設、寄附金に基づく授業科目を開設するなど、多様なニーズに配慮している
放送授業は印刷教材と放送教材で構成され、面接授業は多様な授業形態で指導を行っている 👉印刷教材は市販。学習センター経由だと1割引。
平成27年度からオンライン授業を導入し、インターネットの双方向性を活用した多彩な学習指導を可能としている
適切なシラバスが作成され、ウェブサイトで公開されている
基礎学力不足の学生のため、基盤科目や自己学習教材の提供などの配慮を行っている
成績評価基準を学則に規定し、学生に周知した上で、客観的かつ厳格な単位認定を行っている 👉教務委員会で成績の得点分布をチェック
改善点:
シラバスについて、一層学生の利用の利便性を高めることが期待される
各学習センターのパソコン端末が十分に整備されておらず、無線LANが円滑に利用できない学習センターが数多く残っている
👉今学期から、実習系の授業では各自のパソコンを持ち込むことに。
以上のように、放送大学は多様な授業形態により幅広い教育を提供し、体系的なカリキュラム編成や適切な成績評価を行っている。一方で、シラバスの利便性向上やICT環境の整備などの課題が指摘されています。
放送大学のファクト集(平成29年現在)
放送大学の『認証評価報告書』(2017年)から見えるファクト集
学生数と教員数:学生数は学部82234人、大学院5207人
専任教員数:84名 非常勤教員数:2186名 (必要教員数以上を確保)
教員の年齢構成:39歳以下1.2%、40歳から49歳21.4%、50歳から59歳38.1%、60歳から69歳39.3%
👉教員の8割が50歳以上。女性教員は24%。受講した実感と一致。
教員は原則公募、5年間の任期制。再任は評議会で審査。
教員採用、承認は、人事委員会の意見のもと学長が評議会に発議。評議会は業績評価部会を設置。委員は隣接分野3名と分野外1名。業績評価部会は候補者を評議会に推薦。評議会の無記名投票の過半数で決する。承認については、評議会の三分の二の賛成で昇任を議決する。
入学者選抜:教養学部は入学試験がなく、選抜を行わない。大学院については、試験委員会で第一次合格者を決め、教授会の議を経て学長が決定。
入学定員と実入学者数:教養学部0.75倍、修士課程0.79倍、博士後期1.17倍。👉私大からみると羨ましい。大学院の入学者が減少傾向にある。
基礎学力を補うための「放送大学自己学習サイト」を提供し、18016人が利用。
学習上の疑問は、冊子「学生生活の栞」の付録質問票を郵送する。学習センターでは教員が相談に応じる。
オンライン授業の導入は2015年度から。これまでの放送授業の問題点を改善中。ただし平成29年度で13科目にとどまる。
大学院は修士課程7プログラム、博士後期5プログラム。研究指導は修士8単位、博士後期12単位。学期ごとに「研究レポート」3回の提出を義務付け。
大学院の放送教材は4年ごとに改定。新規科目の開講は平成28年度に3科目。
単位互換制度のある大学院は7校(私立大学がほとんど)。
単位の実質化:自主学習分も含めて、1回45分の授業を15回で1単位。印刷教材の学習分を1単位として、2単位と計算する。
修了率:修士課程で79.4%。退学率は5%と優秀。
再入学のリピーター:再入学率は49%。全コースを卒業する学生は「放送大学名誉学生(グランドスラム)」として19名に付与。
https://www.ouj.ac.jp/about/tanigokan-renkei/school/#anchor_10
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1549762.html
まとめ
日本の認証評価制度では、大学の教育が高等教育としてふさわしい水準にあるかどうかを審査します。この評価は、それぞれの認証評価機関によって定められた大学評価基準に基づいて行われます。大学評価基準は、教育研究上の基本組織、内部質保証、財務運営、管理運営及び情報の公表、施設及び設備並びに学生支援、学生の受入、教育課程と学習成果など、複数の領域にわたる合計27の基準から構成されています。これらの基準を満たしているかどうかが、原則として評価の対象となります。
参考:欧州との違いは国家の教育システムの違い
欧州と日本の大学認証評価制度は、それぞれの教育システムの特性を反映しており、以下のような主要な違いがあります。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784801006942
評価の目的と範囲
欧州: 欧州では、教育の質保証が主に学生中心の学習と柔軟な学習進路の提供に重点を置いています。欧州高等教育質保証協会(ENQA)や欧州質保証登録簿(EQAR)など、複数の機関が存在し、ESG(欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン)に基づいた評価が行われます. これにより、教育プログラムの質が保証され、国際的な基準に適合することが求められます。
日本: 日本の認証評価制度は、文部科学大臣が認証する評価機関によって実施され、大学の教育・研究の質を定期的に評価することを目的としています. 評価は全ての大学が7年ごとに受けることが義務付けられており、教育課程や教員資格、施設設備などが審査されます。
評価の方法と透明性
欧州: 欧州では、評価プロセスが公開され、透明性が高いです。評価基準や方法が公にされ、学位授与機関の評価も含めた広範な改革が行われています. また、学生や教員の意見が評価プロセスに積極的に取り入れられることが特徴です.
日本: 日本では、認証評価の結果が公表され、大学は評価結果に基づいて自己改善を行う必要があります. 評価は文部科学大臣に認証された機関が行い、大学から独立していますが、評価の詳細なプロセスや基準は必ずしも一般には明らかではない場合があります。
ステークホルダーの関与
欧州: 欧州では、学生や業界の代表者が評価プロセスに参加することが一般的です。これにより、教育プログラムが市場や社会のニーズに適応しているかを確認します.
日本: 日本でもステークホルダーの意見が一部取り入れられていますが、主に教育機関内部の自己評価が中心となっており、外部からの参加は限定的です.
このように、欧州と日本の大学認証評価制度は、それぞれ異なるアプローチを取っており、目的や方法、ステークホルダーの関与の度合いにおいて顕著な違いが見られます。欧州はより広範なステークホルダーの参加と透明性を重視しているのに対し、日本は文部科学省と評価機関が中心となって質の保証を図っています。