著者紹介
赤坂憲雄(1953-)は、民俗学者・思想史研究者。学習院大学文学部史学科卒業後、柳田國男の民俗学を継承しながら、独自の視点で日本文化論を展開。現在、学習院大学教授を務める。主な著書に『東北学/忘れられた東北』(1997)がある。
学習のポイント
- 「異人」概念を通じて日本文化の深層構造を解明
- 柳田國男の民俗学的方法論の継承と発展
- 「境界性」の視点からの文化分析手法
- 「他者」認識の歴史的変遷の把握
3つのキーコンセプト
- 異人性:共同体の境界に位置する存在としての「異人」の持つ特質
- 境界論:空間的・社会的境界における文化的意味の解読
- 両義性:聖なるものと穢れた存在という二面性を持つ異人の特徴
重要語句の解説
- マレビト(来訪神):外部から訪れ、福をもたらす神的存在
- ケガレ(穢れ):古代日本における宗教的な不浄の概念
- ハレとケ:日本の民俗社会における非日常と日常の二元的構造
- 境界性:共同体の内と外を分かつ空間的・観念的な領域
図書の評価
本書は、日本民俗学の伝統を踏まえつつ、新たな文化論的視座を提示した画期的な研究として評価される。特に、「異人」という概念を通じて日本文化の構造を解明しようとする試みは、後続の研究に大きな影響を与えた(出典:小松和彦『日本民俗学の展開』2000)。
必要な関連情報
- 柳田國男の民俗学理論についての基礎知識
- 日本古代史における他者認識の歴史
- 日本中世の宗教史に関する理解
- 文化人類学における儀礼論の基本概念
最新の研究動向
2000年代以降、グローバル化に伴う他者認識の変容という観点から、本書の議論が再評価されている。特に、移民研究や多文化共生の文脈で「異人」概念の現代的意義が注目されている(出典:山口昌男『文化と両義性』2018)。
参考文献リスト
- 柳田國男『遠野物語』角川書店, 1991
- 小松和彦『日本民俗学の展開』講談社学術文庫, 2000
- 山口昌男『文化と両義性』岩波書店, 2018
- 網野善彦『無縁・公界・楽』平凡社, 1996
- 坂部恵『かたり』筑摩書房, 1990
- 折口信夫『古代研究』中央公論社, 1989
- 上野千鶴子『異文化としての女性』岩波書店, 1992
- 宮田登『異人論の系譜』筑摩書房, 1994